「――きゃっ…!」

視界が逆転したかと思ったら、春海が私を見下ろした。

「やられっぱなしは好きじゃないんだ」

そう言って、春海は触れるだけのキスをしてきた。

何度も何度も、触れては離れる唇。

部屋に響くのは、唇同士が触れる音。

唇だけじゃ、物足りない。

ううん、もう足りないの。

それを伝えるように目で訴えて見つめるのだけど、春海は何もしない。

わかってる。

わかってるから、わざと気づかないふりをしている。

私が口に出して言うのを待っている。