「――ヤだ、春海…!」

電話に向かって走ると、すぐに子機をつかんだ。

「――春海…春海…」

呪文のように何度も名前を呼びながら、震える指で春海の携帯電話の番号を押した。

それを耳に当てると、気を落ちつかせるために深呼吸をした。

子機から流れる機械音は、さらに恐怖を引き立たせる。

ドアの音は止まない。

「――春海、出てきてよ…」

プツン

途切れた機械音に、春海が出たのがわかった。

「もしもし!?」

「春ちゃん!」

お願い、私を助けて…!