ある日ね、

ケンちゃんの赤いほっぺが片方青くなってたの。

リンゴみたいな赤いほっぺが青かった。


そしてケンちゃんはなんだか元気がないの。

(だいじょうぶ?)

ってペロってほっぺをなめたんだ。

ケンちゃんは見たことない笑顔で
「おやつほしいの?」

って言ってササミジャーキーをくれたの。

おやつがほしいんじゃないよ。

ケンちゃん。

ケンちゃんが元気じゃないとボクも元気でないよ・・・。



「ワンワン!」(元気出して!ほら遊ぼう!!)

「よーーーし!!じゃあ行こうか!!」

ってケンちゃんはいつも通りの笑顔で遊びに連れて行ってくれたんだ。


よかった!ケンちゃんが元気になって、よかった!




でも、なんで元気なかったの?





ケンちゃんが言った。


「プッチ・・・パパとママ好き?」


「ワン!」(うん!大好きだよ!)


「うん、ぼくもお父さんとお母さん大好き!」

「でもさ。プッチ・・。」


「お父さんとお母さんもぼくのこと、好きになってもらうにはどうすればいいのかな?」

「ぼくね、悪い子だから。・・・いい子になれないから、お父さんとお母さんはぼくのことキライなのかなって思うんだ。」


(なにいってるの?ケンちゃんのこと、キライな人なんているわけないよ!!)

(みんなケンちゃんのこと好きだよ!)

そうボクは言ったけど、ケンちゃんはまたあの悲しそうな笑顔でボクの頭をやさしくなでた。


ケンちゃん・・・。

なんでそんなこと思うの?


ケンちゃんとまた楽しく遊んだ。

おウチに入るまえに、ケンちゃんがボクの足をきれいにしてくれてたの。

そしたら、

「バンッ!!」


て、とつぜん大きなおとを出してドア開いた。

そこには知らない女のヒトがいたの。


「ケンタロウ!!なにしてんだよ!帰るよ!!」



ケンちゃんのママ?

なんだか怒ってる・・・。


「はい。お母さん・・・。」

ケンちゃんはボクに

「またね。」

て言ってケンちゃんのママと行っちゃった・・・。
次の日、ケンちゃんが遊びに来た。

いつもの笑顔で、

「よし!プッチ行こう!」

と言ってたけど、


なんで足をひきずってるの?


クーーン。(ケンちゃん、痛いの?)


ケンちゃんの後ろすがた見てたら、

ボクに気づいたケンちゃん。


「プッチ・・。またぼく悪い子になっちゃった。」

「だめだね、テストの点良くなかったんだ。」


ケンちゃん。悲しいかおしてる・・。

ケンちゃん、悪い子じゃないよ。

ボクが一番知ってる。

ボク、ケンちゃん大好きだもの。




だから、またあの大好きな笑顔みたいよ。
ケンちゃんはあれから、あんまりボクのおウチに来なくなった。

ボク、ママに聞いたの。

(ママ!ケンちゃんは?!また遊びに来るよね!)

(今度はいつ来るの?!)
「クーーン・・・」


「プッチ・・ケンちゃんのこと?」

ママはボクを抱っこしてくれた。


「そうね。また遊んでもらいたいね。」


「ワン!」(うん!)



お空が暗くなって、パパとママがお話をしてた。


ママがお目目から水をだして、とても悲しい顔をしていた。


ケンちゃんの話をしているみたい。


「ケンちゃんがかわいそうすぎるわ!」

とママは言った。


パパ、ママ・・・ケンちゃんどうしたの?また悲しい顔してたの?
ケンちゃんが遊びに来てくれた!


わーーい!わーーい!ケンちゃんだ!うれしいな!!

ボク、ケンちゃんに会えてうれしい!!


「プッチ、あんまりさわいじゃだめだよ?」

「さわぐなら公園に行ってからじゃなきゃ!」



ボクとケンちゃんはたくさん遊んだんだ。


わーーい!わーーい!

楽しいな!

うれしいなーー!!

ボクはまたしゃぎすぎちゃって、ケンちゃんのおひざでひと休み。


ケンちゃんはずっと、ボクのからだを優しくなでてくれてた。


おウチに帰って、ママが「おかえりなさい。」って玄関で待ってた。


(ママ!ママ!ボクね、またケンちゃんといーーーっぱい遊んだの!!)


(すっごく楽しかったんだよーー!)



ママはしっぽふるボクを、だっこして

「そう。よかったわね」


「ケンちゃん。もしよかったらお夕飯ウチで食べない?」

「おうちのひとには、電話しておくから。」


「あ・・・。はい。でも、お母さんきっとだめって言うと思う・・・。」


「だいじょうぶ!おばさんに任せなさい!」


「じゃあ、もし来れたから来たいです!」


「分かったわ。じゃあ連絡しておくからまた後でいらっしゃい。」


「はい。ありがとうございます!」


ケンちゃんは走って帰った。


「プッチ!ケンちゃんまたくるわよ。ママがんばってケンちゃんのママ説得するからね?」


(本当?!じゃあケンちゃん、また遊んでくれる?!わーーい!!)


ボクはママのうでからジャンプして、またはしゃいじゃったんだ。
お空が暗くなって、ケンちゃんはボクのおウチにきた。



「おじゃましまーす。」



ワンワンワン!!

(ママーー!本当にきたよ!ケンちゃんだ!)


ボクはまた、ケンちゃんがきてくれたからはしゃいじゃった。


「ケンちゃん、いらっしゃい。お夕飯の準備できたら呼ぶからそれまで2階でプッチと遊んでいてくれる?」


「はい。プッチ、何して遊びたい?ボールがいい?」


ボクとケンちゃんはボールで遊んだり、ゴロゴロ転がったりして遊んだんだ。


すっごく、楽しかったんだよ!


ケンちゃんがウチに住んでたら毎日こうして遊んでいられるのにな!


「ケンちゃ〜ん!プッチ〜!ごはんよぉ〜。」




「はーーい!」


わーーい。ゴハンゴハン!


ボクは1階への階段をかけおりた。


ケンちゃんは・・・なんでだろう。


すごく、ゆっくりおりていた。


(ケンちゃん!はやくはやくーー!)


「ごめんね、プッチ。おまたせ。」


すると、ママがドアからお顔を出して


「どうしたのケンちゃん。顔色がよくないみたいね。具合わるいの?」

と言った。


「・・・だいじょうぶです。おなかすいたなー。このにおいはカレーですか?!」


「正解!カレーよ。カレーは好きかしら?」


「はい!とっても!!」


ごはんはパパ、ママ、ケンちゃんとボクとで食べたの。


「ケンちゃん、たくさん食べてってね。おかわりもあるわよ。」


「はい。ありがとうございます。すごくおいしいです!」



「ケンタロウくん、本当に具合悪そうだな。」


パパがそういうとケンちゃんが、


「いえ、大丈夫です・・・すいません、ちょっとトイレ借りてもいいですか?」


と言ってイスから立って・・・。



「バタンッッ!!」



ケンちゃんは急に倒れた。



「ケンタロウくん!」

「ケンちゃん!」



「ワンワンワン!」


(ケンちゃん!)

(ケンちゃん!どうしたの!!)




ケンちゃん――――――!!



   


ケンちゃん、パパと知らない男のヒトたちに連れて行かれて、


帰ってこない。




ボクはケンちゃんが帰ってくるのを、げんかんで待ってた。


ケンちゃん・・・まだかなぁ。


すると、ママがボクをだっこして、


「プッチ・・ケンちゃんはもう来ないの。」


ママが変なの。


ケンちゃんが来ないって?


なんで?


「ごめんね・・・。ママがあの時おウチに帰さなければ・・・。」



「ケンちゃんの様子がおかしいって分かったときに気づいていたら・・・。

 暴力なんて、自分のこどもになぜ出来るの?!

 ケンちゃん、がんばって来てくれたのね。

 苦しかっただろうに、

 プッチを悲しませたくないから、

 ともだちを悲しませたくないから、


 プッチの喜んだ姿が見たいから。

 来てくれたのね。

 ケンちゃんはやさしい子、とってもいい子、


 いいおにいちゃんだったね。」



ぽたぽたと、ママのお目々から水がおちた。


ボクはママがなにをいってるのか分からないょ。
ボクはケンちゃんに会いたくて、会いたくて、


もしかしたら、きょうは「がっこう」から帰ったら来てくれるかも!


毎日、お外をながめていたんだ。


でも、ケンちゃんは来ない。




それから何度かお空が暗くなったり明るくなったりくり返して、


あたたかい空気といっしょにお外からあの甘い匂いがしたの。


このにおいはね、「さくら」だってまえママがおしえてくれたの。


ボクがさくらをはじめて見たとき、


ケンちゃんと会ったの。



ケンちゃんはあの時からあの笑顔だったね。


ケンちゃん、




また会えるよね?