『信号、青』
ああ、そうね。じゃなくて、
『焦ってんの、バレバレ』
クッと笑う涼しげな声。
それは、携帯越しなのに、えらく近くて、
「た、たから!?」
『正解』
いつの間にかすぐ隣でニコリと綺麗な微笑を向けて、新橋多空はもう一度、携帯越しに呟く。てか、なんで
「ここにいるのよ?」
「別に、偶然」
あっさりそう言う整った口元。
偶然、偶然でも構わないけど、今会いたくなかったし、
「変な顔」
多空はまたフッと笑ってあたしの頬をつねった。
「今夜、迎えに行く」
短い言葉、不敵に笑ってそのまま交差点を通る背中はもう一度も振り向かない。
本当、ムカつく男。
なのに
今夜、またあの涼しい瞳に
見つめられるかと思うと、
もう、やだ。
信じらんない。
あたしは、熱くなる頬に気づかないふりをして、もう見えない背中を追い掛けた。
Fin