それが聞こえたのと同時に

心臓が痛くなった。


……なにこれ、苦しい。


そんな私をちらちら気にしつつ


「あぁ、悪い。すぐ行くから。

怒んなって。ああ、あぁ、……じゃあな」


彼は通話を終え再び向かい合う。


何か言われるか、

正体不明な胸の高鳴りを感じつつ

向こうの言葉を待った。


「……とりあえず、香乃子ちゃん、

水野をよろしく!

俺からも話しかけてみるけど、香乃子ちゃんも頼んだよ!

……じ、じゃあまた明日っ!!」


さっきの動作にはひとつも触れず

本題だと言っていた水野くんのことを言い終わると

さっと行ってしまった。


まだ少し震えてる足のまま

私は数十秒その場に立ち尽くしていたけど

はっとして教室に向かった。


「……わけわかんないよっ」


『稜佑』

自分の声とアイツの顔がちらつく。



やっぱり私は稜佑のことは全然わからないんだ。