「じゃあ何?
美奈ちゃんたち待ってくれてるから早くしてよ」
不満げに私が尋ねると
「可愛くないなー」
何て言いながら
続けて口を開く。
「水野のことでさ」
そう言った奴の顔は苦笑いに近いものだった。
「……水野くん?」
私もさっきまで気にしていたから
話題に上がったことに興味がわく。
「あ、水野のことは名字でもちゃんと名前呼ぶのかよー」
なんて頬を膨らましてる目の前のコイツはどうでもよくて、
「水野くんがどうしたの?」
何て続けると
「あー、あいつさ、本とか読んでてずっと1人じゃん。
最初は好きでそうしてるのかと思ったんだけど、
どうも違うみたいでさ」
「あー、私みたいなね。」
なんて自分でもびっくりするような
自虐的なセリフがでたけど、
彼が前の私に似ているということは少し前から感じてたことだから。
「おっ、香乃子ちゃん、話が早い!」
全く褒められてる気もしなく
むしろけなされてるような気もしなくないけど、無視。
「……で?結局何が言いたいの?」
「あぁ、俺がさ農業体験でなにやるか聞いた時、
あいつ本読む手をとめたんだよ。
でも、俺特に気付かなくて
進めちゃったんだけど、
あれってあいつ考えようとしてくれたのかなーとか思いだしてさ」
……やっぱりいつも思うけど、
コイツ想像以上に人のこと見てる。
何て思いながら結論を急がせる。
「うん、それで?」
「おう、香乃子ちゃんさ、
水野と友達になってくんね?」