廊下は終礼直後ということもあって

たくさんの生徒で賑わっている。


あの有名な桃井稜佑が

誰かわからない女子の腕を掴んでる様子は

瞬く間に生徒達の視線を奪っていった。


私はなるべく顔を伏せながら

どうにか掴まれてる腕を放してもらおうと

頑張って抵抗するけど、敵うわけがない。


相変わらず引きづられたまま後ろをついて行くと

前に私がコイツにお礼を言った

廊下の奥のくぼみで足を止めた。


「ねぇ、ちょっとなに考えてんの!!」


廊下の奥には人はいなく、

私たちを面白そうに見ていた人たちも

ついてくる人はいなかったため

私は隠さず物言いをキツくする。


「あー、悪い悪い。

相談があってさ」


目の前のコイツは 全く悪びれてなさそうに頭をかく。


何の相談なのか、

気にはなるも全く良い予感はしない。


「てかさ、香乃子ちゃん、

この間俺言ったじゃん、

名前呼んでって」


……またその話題か。


全く呆れて、私は教室へと体を向けた。


けど


「いやいやいや、本題それじゃないから!」

という奴の言葉を聞いて、

良心がはたらいたのか、私は向きを戻した。