「よかった!

これから隣駅のどこかカフェにでも入ってお話ししようよ」


人差し指をピンと立て

首を傾げて美奈ちゃんは微笑む。


放課後、カフェで友達とお話し。


そんなワードに胸がときめくのをとめられない。


『うん!是非!』

そう答えようとして

口を開いた。

「う――「やーまださんっ」

のに後ろから被った声によって

私の返事は消される。


「あれ、桃井くん?どうしたの?」

美奈ちゃんは奴に視線を向ける。

私は嫌な予感しかしなくて

あえてそっちを見なかった。


「ちょっと山田さん借りていい?」

有無を言う前に私の腕が掴まれる。


「えっ……ちょっと!!」

私の抵抗も虚しく

ずるずると教室を引きずられる。


「すぐ返すからさー!」

美奈ちゃんに言うようにと大きめの声で話すコイツは

クラス中の視線を集めた。


それに伴って私にも視線が集まる。


信じらんない!こんなの悪目立ち!!


私はパニックで


かろうじて


「じゃあ待ってるよ!

教室で茜達と待ってるからね、香乃子!」


という美奈ちゃんの声が

教室を出る前に最後に聞こえた。