酪農体験に決まった後は

この時間が終わるまで

みんなで談笑をしていた。


隣に座る紗依ちゃんが話しかけてくれたりして

私も会話に入ることが出来たけど

なんだか目の前で静かに本を読む水野くんがやっぱり気になって

申し訳ないくらいに空返事だったと思う。


「起立ー、礼」

そのまま終礼になって

クラスは解散する。


私は帰ろうと鞄に荷物を入れていると

目の前に誰かがきて

私の机に身を乗り出して、トンと手を乗せた。

「美奈ちゃん……?」

とその人物が誰かを認識して尋ねると

彼女はノリノリな表情で


「香乃子、今日の放課後は暇?


作戦会議するわよ!」


と言い、

彼女のくるんと巻かれた明るいブラウンの髪がゆれた。


『作戦会議』……?

内容はよくわからなかったけど

放課後みんなに一緒に帰ってもらったことはあったものの

何かに誘ってもらうのは初めて――

じゃないけど、
どっかの誰かが軽く声をかけてきて不快になったことはノーカウントだとして、

とても嬉しくて胸が踊った。

「放課後、空いてるよ!」