そんな、下の名前で呼ぶなんて、

みんなにコイツ親しいと思われたら嫌だ……。


そう考えて返事しないでいると


「今ちょっと呼んでみ」


さっき近づいてきた顔がもっと近づいてきて

私は咄嗟に顔を後ろに引く。


「ち、近い!!」


私が焦っている様子を見て

絶対楽しんでるコイツは

私が後ろに下がったのにも関わらず

今度は私の髪をひと束指に絡めた。


「ちょっと……!」


ゆるく絡んでるはずなのに、

後ろに下がると髪がひっぱられそうで

体を引けない。


「呼んだらほどいてやるよ」


えらそうに、誘うような目で私をまっすぐ見つめてくる。


ああ、これ。

ダメなんだよね、私。


コイツにまっすぐ見られるのに弱いのよ。