「んで?説明だかなんだかしてくれるんなら早くしてよ」
もうみんなが先に帰ってしまったので
放課後早く帰る意味もない。
もちろんコイツと関わりたくないのには
かわりないけど、
今この状況で何か言っても
言いくるめられるのがオチだろう、
なんて私もそろそろ学習してきた。
あんまりその『説明』は聞く気がないけど、
素直に聞いておいたほうが
むしろ早く開放してくれるだろうと思い、
私は机に肘をついた。
それを見た桃井稜佑は口を開く
「……ねぇ、香乃子ちゃんさ――」
やっと説明をしてくれるのかと思ったら
「俺のこと、何でいつも『アンタ』って呼ぶの?」
はぁ?
なんてどうでもいいことを。
そんなこと今まで考えたことなかったけど、
確かに、言われてみればそうかもしれない。
「別に、特に意識してなかったけど?」
素直に答えると不満そうに
「あんま良い気はしないんだけどな」
なんて言って
彼が座ってる机に寄っかかっている私に
急に顔を近づけた。
「じゃあさ、これからはちゃんと『稜佑』って呼んでよ」