「もう稜佑の事なんて信じらんない。

好きになったあたしがバカだった……さようなら!」


そう言い終わると、

私がいるドアとは違う、

後ろのドアからその女子は出て行き

廊下を私が歩いてきた方とは

反対に向かい駆けて行った。


目の前で起きていたのであろう荒事にびっくりして、

私はその子が走って行った方をただぼーっと見ていた。


その瞬間――


「……わっ!」  ガラッ


私が声をあげたのと、手をかけていたドアが開いたのは同時だった。



「……盗み聞き? いけないんだー」


急に視界が暗くなったと思い、顔を上げると、


ついさっき振られたとは思えないほど普通の表情の桃井稜佑が目の前にいた。