「そそそそんなんじゃないもん!!」

と茜ちゃんは慌てた。


「『伊東くん』……?」

と私が首をかしげると

紗依ちゃんが耳元でこそっと

「茜の好きな人なんだよ。

ほら、桃井くんの隣にいる人」

と騒がしくしてる方を小さく指さす。


ああ、あの桃井稜佑に絡まれて苦笑いしてた人ね。


「茜ってばね、

この間昼休み伊東くんと下の自販機の前で会って、

好きになっちゃったんだってー!」

と嬉しそうににやけている美奈ちゃんの口を押さえるフリして

「もう、美奈!声大きいよ!!」

と茜ちゃんも楽しそうにはしゃいでいる。


私もそんな空気が楽しくてつい笑顔になる。


「自販機の前で?何かあったの?」

なんて私が話を掘り下げると


「あ、いや、伊東くんが落とした小銭を

偶然後ろにいた私が拾ったら、

『ありがとう』って言って笑ってくれて……」

顔をリンゴのように真っ赤にした茜ちゃんがぼそぼそというと、


「しかも伊東くん、その後

『立川は何飲むの?』とかいって、

茜が『あ、レモンティー……かな?』っていったら

拾ってくれたお礼とかいっておごってくれたんだって!」

興奮気味に美奈ちゃんが話す。