階段を上り、教室のある3階に着いた途端に小さく声が聞こえた。


「――っなの!? ねぇ!」


教室が近づくにつれて、

曖昧に聞こえてくる声が大きくなっていく。


きっとこの声は教室から聞こえていている。

どうやら、まだ人が残ってるみたい。


「あたしだけって言ってたじゃん!」


そうはっきり聞こえる頃には、

私はもう教室のドアに手をかけていた。


「まあまあ、ってなに?ちゃんと説明してよ!」

荒々しく何かを言っている女性の声。


……ん、何か揉め事?


そう思って、ドアに手をかけたまま私は開けるのを躊躇していた。


「だーかーらー、悪かったって。なっ?」

その女子にこたえるその声はいつも教室でうるさく響く、あの声。


げっ……桃井稜佑――?