「それと、ありがとう」


あの時チャンスをくれたから、

あの窮屈だった教室に

初めて私の居場所ができた。


それは私だけでは無理だったと思う。


悔しいけど、

コイツのおかげで

私の学校生活は少し色彩がついた。


「アンタのおかげで

私先ずは一歩踏み出せた」


さっき知り合ったみんなの顔が浮かんだ。


そして自然と口角が上がる。


黙って私の話を聞いていた桃井稜祐は

何を思ったのか、

私が言い終わり顔を上げると

手のひらで口を押さえ軽く頬を染めていた。


「ちょっと、……聞いてた?」


よくわからない反応をされて困っていると、


「き、聞いてた!」


と食いついてきた。