「実はずっと山田さんと話してみたかったんだ」


そう言って大人っぽい彼女は

自分の巻き髪を触った。


「あっ、えっと……」


嬉しいんだけど、

私は入学式から数日間休んでいたせいで

自己紹介とかも聞けてなく、

クラスのほとんどの人の名前を未だに覚えられてない。


それを察してくれたのか、

順に自己紹介をしてくれた。


「私はね、久良伎美奈(くらきみな)

前にも山田さんとお話したことあるんだけど、

覚えてるかな?」


彼女は高1にしては随分と大人っぽく、

腰に巻いたキャラメルのカーディガンがとてもよく似合っていた。


『前にも』?


そう思って記憶をたどる。


私がクラスの人と話したことがあるのは

基本的に事務連絡とそれと――


「あっ、本!」


「そうそう!覚えててくれたんだね!」


彼女は1番初めに私に

「何の本読んでるの?」

と話しかけてきてくれた子だった。