教室中にその声は響き、

一気に桃井稜佑へとクラスの視線が集まる。

一層ざわざわし始め

そこら中で

「持ってる?」

「ううんー」

とか

「稜佑何言ってんだ?」

「針と糸……?」

なんて声が上がり出す。


私の心臓が口から飛びてるんじゃないかってくらい鳴っている。



『勇気出して声上げろよ』

この言葉の意味は理解できた。



さっきの『もっとひどくなる前にーー』という言葉も
壊れかけのマスコットに向けたとも捉えられるし、
私に向けてのものだったんだろうとも思っている。



そして彼の昨日の帰り道での態度。
やっぱりあれは真面目に心配してくれてたってことなんだ。


ここまでお膳立てされて逃げるなんて、

そんなの私は出来ない。


私はさっきの桃井稜佑に負けないくらい

すぅっと大きく息を吸った。


ゆっくり席を立ち上がる。


そして、



「――わ、私、持ってますっ!」