えっ、何?
びっくりして振り返ろうとしたけど
「勇気出して声上げろよ」
続いて耳元で小声で囁かれ、
それがここ最近ずっと聞いてた声だと思った時には
奴は私の横をすっと通りすぎ
さっき私が見ていた子達のもとへ歩いて行った。
そして、
「さっき立川叫んでたけど大丈夫か?」
彼女たちに話しかける。
「あっ、桃井くん。
うん、紗依の大事なマスコットのリボンが取れかけてて」
大きな声を出していた子が事情を説明する。
「大事なものなら早めに直したほうがよくね?」
と奴が質問すると
「うん、でも今直せる道具持ってないから。
お家帰ったら直そうと思ってるよ」
キーホルダーの所有者の彼女が
少し困り顔で笑って答えた。
でもそこで彼は引き下がらず、
「んー、だけどそれまでにもっと悪化しちゃう可能性もあるかもだよな」
そういうと、
桃井稜佑はこっちを向き、
一連の流れを見ていた私と目が合った。
口角が少し上がったかと思うと、
「もっとひどくなる前に、
自分から行動していったほうがいいよ。
後で取り返しがつかなくなって
後悔するほうが絶対もっと嫌じゃね?」
言い終わり、彼はすぅっと息を吸った。
「おーい、今針と糸持ってる奴いねぇー?」