なのに


「……茶化してないってば。

見下してもない。
香乃子ちゃん頑張ってるなって思ったよ。

……まあ、余計なこと言っちゃったみたいなのはごめんだけど。

でも、もっと良い方向に工夫できれば
香乃子ちゃんの側に誰かがいる学校生活になるかもしれない、って。

俺がそのきっかけになれたらって思ったから。

俺と話すことでそこから繋げていけるなら、
なんて思ってるんだよ」


急に真剣なトーンで話したコイツの声色は

初めて聞くものだった。


「…………そう、ですか」


私は言いすぎたかもという思いと、

実はこれもからかうための演技、
私に謝らせるためのフリなんじゃ。

と思う気持ちが両方あって謝るに謝れなかった。


その後は気まず過ぎて帰り道を進む私と
それに気づいて一緒に歩き出した桃井稜佑が

お互い無言のまま、
横並びなのに他人のように距離をあけながら
駅までの道を歩いた。


私は改札を抜けた後

「じゃあまた明日」というアイツの言葉を無視して

同じ電車の、あえて違う車両に乗り

そのまま解散となった。