「それは、ソーイングセット」


「……ソーイング?

え、何に使うの?これ」


「布のほつれとかの応急処置用の持ち運べる小さな裁縫道具よ」


そう説明すると


彼は「ふーん」と頷き

「意外と女の子らしいね」

なんて言ってきた。


今更何言われても

今日はもう反応する気力がなく


「そう?」

と適当に返すと、


「うん、普通の子なんだなっていうか」

やっぱりなんだか変なこと、屈辱的なことを

言われている気がしてほかならなかった。


校門の前で立ち止まっている2人はきっと変に映るだろうと思って

私は最寄駅までの道を歩き出す。


「どうしても放課後付き合ってくんないの?」

と隣で言うこの人を完全にスルー。


私ももう抵抗に疲れて、

隣をこの人が歩くことに何も言及しないでいると、


「……なんで香乃子ちゃん友達できないんだろうねー」

とどうでもいいように発せられたつぶやきが聞こえてきた。