「お前、水野!『なんだ』ってなんだよ!」
「いや、邪魔だったから」
本を片手にほとんどスルーで稜祐の横を通り過ぎた水野くん。
「本読みながら歩いてたんだろうー、お前!」
負け惜しみのように絡む稜佑を一瞥した水野くんは
私のほうを向き、
「山田さん、あいつうるさいからなんとかしてくれる?」
いつもの調子で呆れ顔。
「香乃子に構ってもらいたいんだって!」
「そうそう!」
美奈と茜は完全に面白がってて。
「さっき言ってた事何か気にしちゃってるんじゃないかなあ」
紗依は嬉しそうに、にっこり。
助けを求める意味で伊東くんを見ても
「よろしくね」
って、嘘でしょ!?
渋々稜佑に近づくと
「香乃子ちゃんも俺が『遊んでる』って思ってる……」
あー、もう、面倒くさいなあ。
「思ってないわよ!」
「遊んでるって思われたり、
変な噂がたってるのは日ごろの行いのせいだって」
「これから噂も違うって証明していけばいいんじゃない?」
「うん……俺らちゃんと付き合ってるよな?」
「そうね」
そう言うと嬉しそうに笑う稜佑。
なんだコイツ、可愛いな。
入学当初から色んな人に注目されて、
いっつも話題の中心になっちゃう
そんなスキャンダルな稜佑だけど――
「そんなに不安なら、証明しちゃえばいいじゃない」
私は、こんな高校生活もいいかな、
なんて今では思ってるんだ。
「へ?」
アホ面の稜佑に顔を近づける。
「いっそ、一緒にスキャンダルになっちゃおうか」
そう言って私は稜佑にキスをした。
Fin.