そう言われて連れてこられたのは、

いつもの、静かな廊下奥。


まだ残ってた生徒たちの視線を浴びながら

移動したのは恥ずかしかった……。


流石にここまでついてくる人は

前と変わらずに誰も居なかった。


「ここ、よく来るよね」

何気なく言うと、

稜佑は優しく笑った。


「俺さ、この前香乃子ちゃんに

俺の全部を肯定するって言われたとき、

本当に自分のことを好いてもらってるのか

わからなくなったんだ。

俺の過去も聞いた人が、

その過去も肯定するなんて、有り得ないって。


同情から抱かれた好意なのかと思って、

一気に香乃子ちゃんが怖くなって。


それで改めて考えると、

俺って肯定されるようなこと何もしてないなと思った。

先ずは今の俺が誠実になろうと

なあなあな関係を切ったりするうちに

香乃子ちゃんのことを好きな気持ちと、

それでも既に俺は汚れてるって気持ちが増していった。

そのイラつきで麗佳や佐月に当たって

自分の行動すべてに嫌気がさした。


俺は自分がどれだけ色んな人と仲良くなれても

ずっと自分が嫌いで肯定なんて出来ないんだ。


あの日、本当の母親すら守れなかった俺が、

嫌いで憎んでいても父親に認められたいと思ってる俺が大嫌いなんだ」