立ち止まった背中に
急いで駆け寄る。
「稜佑!」
もう一度呼びかけると、
驚いたように振り返った。
隣にいる伊東くんが何かを察したように
くすっと笑って、
「俺先帰るね」
なんて先に行ってしまった。
「え、佐月!?」
不安そうに向こうを向いてしまった稜佑の
シャツの裾をつかんだ。
「……香乃子ちゃん」
そうだ、コイツだけは
『香乃子ちゃん』なんて
呼ぶんだよね、私のこと。
誰とも話せなくて、
みんなにまだ『山田さん』と呼ばれてた私。
なのにコイツが放課後女子とトラブルになっているところに
偶然遭遇しちゃってからは
からかわれて変につきまとわられて。
「アンタ、何考えてんのかわかんないのよ!」
初めからそうだ、
何で気に入られてしまったのか?
からかうくせにどうして
私の手助けをしてくれてたのか。
何を考えているのか、まったくわからない。
だけど、そんな奴のおかげで私は友達が出来た。