「あのさ、今日先に帰っててもらって大丈夫!」


終礼が終わってすぐ一番席の近い美奈に

話しかける。


「え、何で?」

不思議そうに私を見る美奈に

「実は、水野くんに放課後呼ばれてて」

そこまでいうと、

妙に納得した顔で美奈は頷いた。


「わかったよ。

茜は部活だから、紗依と先に帰ってるね」


「うん、よろしく」


そう返事して、

私は水野くんの方を見る。


パチっと目が合って、

胸が一瞬でドキリとした。


彼は鞄を肩にかけて

こっちへ足を進める。


「行こうか」


私の目の前まできてそういうと、

ささっと教室を出て行ってしまった。


慌てて追いかけようと

私も鞄を取って駆ける。


教室のドアに手をかけると

稜佑とすれ違う。


「あ、ごめん」

咄嗟にそう答えると

優しい表情で

「大丈夫、行ってらっしゃい」

と言われた。


……ん?

『行ってらっしゃい』?