「――――っ!!な、何すんのよ!」


「え、何って……メガネ直してあげたよ」


相変わらず気味悪くにこーっと笑う桃井稜祐。


私は急激に心拍数が上がっているのを感じて、

もう体の全てがコイツを拒否しているんだと思って

自分に同情した。


だけど目の前の奴は何を思ったのか、


「香乃子ちゃん、真っ赤なんだけど、

もしかして……照れてるの?」


なんて言うから、

多分イラつきすぎてだと思うけど、

とっさに顔がとても熱くなった。


「え……、ヤバ、結構可愛いんだけど」


訳のわからないことをつぶやく彼に付き合いきれず

もう一度置いて帰ろうと試みた――のに、


「……香乃子、ちゃん、

メガネ外して俺に表情見せてくんない?」


一瞬『香乃子』だけが聞こえてドキっとする。


何急に呼び捨てにするのよ、気持ち悪い。


と言おうと彼を見て、


続いて『ちゃん』とつけられて出遅れ、


その間に

手首を掴まれた。


「こっち向けよ」


奴の甘い香りを感じると

さっきまで気味悪く笑ってた顔が

今はなんだか真っ直ぐ私を見ていて、


私は無意識のうちにこんなに近くにあることにも嫌がらず

私より全然高い彼の顔を見上げていた。