私ははらはらして手に汗を握る。

だけど、ここで出て行ったって意味ない。

私には何にも出来ない。


「本気で嫌いなんだよ、お前も!

あのクソ親も!!

俺の好きなもの全部めちゃくちゃにしやがって!

いい加減に――しろっ!!」


見ているだけの私が

はっとして意味もなく咄嗟に一歩踏み出した。


だって、稜佑が手を高く上げて――!!


「ってー……」


伊東くんが斜め下を向いてうなだれる。


「きゃー!」

どこからか女子生徒の悲鳴があがる。


「お前なぁ!!頭冷やせよちょっと!」

顔を上げなおした伊東くんが

稜佑のシャツの胸倉を掴む。


彼の唇からつーっと赤く、血が滴る。


どうしよう!!!

パニックな頭で

横にいるだろう紗依と美奈を見ると、

そこに2人の姿はない。


「――先生っ!!こっちです!」

すぐに校舎の方から

体格のいい男性の先生を呼んできた2人を見つける。