「い、いってくるね」
「うんっ!」
放課後、下駄箱の掃除当番の稜佑が
掃除を終えて教室に帰るときを話しかける、つもり。
私は当番じゃないから
不自然にならないように
下駄箱へ続く廊下をうろうろ。
そろそろかな。
スマホの時間を確認してると――
「あのっ、山田さんですか!?」
「はい」
……誰?
「俺、隣のクラスの――です。
ずっと山田さんのこといいなって思ってて……」
またか。
なんか声かけてもらえるのは嬉しいんだけど
今はそれどころじゃない!
何て言ってかわそうかな……。
じーっと返事を考えていると、
目の前の男子が急に私の後ろを見たと思ったら、
「ひいっ!」
奇声を上げて肩を跳ね上げ、
「ごめん!何でもないですっ」
どこかへ駆けて行ってしまった。
え、私なんかした?
怪訝に思って後ろを向くと、
無表情の稜佑が。