少し早足で教室に戻る。
なんだか先陣切って帰ったくせに
今教室から出てきているクラスメイトと
すれ違うのはだいぶ恥ずかしかった。
……だけど、誰も私のことなんて認識していないから。
誰の視線も浴びずに教室まで戻ってきた。
ガラリとドアを開けると
まだ複数人が残っていた。
「マジかよー!!」
癇に障る声も聞こえる。
ちらっと横目でその声の方を見ると、
机に座る桃井稜佑を囲む数人が
騒がしく何かを話しているようだった。
私はそれを一瞥して
自分の席の机から案の定忘れていた小説を出すと
鞄にしまい、また素早く教室を出た。
ふぅ、帰ろっと。
教室のドアを
そう思って廊下を歩こうと一歩を踏み出したとき、
背中の教室のドアが開いた。