「どうにかしてやりたいけど、
俺は何も出来なかった。
だけどもどかしい日常を送っていた俺らに
転機がきた。
急に変わったあいつの傍には
1人の女の子が居たんだ。
誰かわかる、よね?」
今まで足にひじを置き
前のめりに話していた彼が顔をあげた。
「初めは稜佑を嫌う山田さんを面白がってただけなんだ。
あいつがそう話してた。
俺はその時
山田さんに迷惑をかけるのはやめろと言った。
それでもそのうち面白がるだけじゃなくて、
今までそういう感情でしか人と付き合えなかった稜佑が
初めて『面白いから』以外の感情で動いたんだ。
俺はやっとあいつに大切な人が出来たんだと思った。
嬉しかったよ、俺にはどうしようも出来なかったし。
だけど山田さんがさらに大切な存在になっていくたび
初めての存在にあいつはわからなくなった。
距離感や大切にする仕方が。
あんなに目立って遊んでばかりの軽いやつのくせに
実は本当のあいつはただの不器用だったんだ」