「稜佑の父親にね、隠し子がいたことが発覚するんだ。
稜佑の幼稚園が最後の歳のときだったよ」
私は真っ先にあの子の顔を思い浮かべる。
『腹違いですけど』
……麗佳さんだ。
「父親の浮気は度々桃井家で問題になっていたらしい。
若くして企業の幹部で優秀な人だけど、
仕事なのか遊びなのか、いつも家にいない。
それでも稜佑も小さいし家計も安定してる、
だから別れられない。
そう、あいつのお母さんが俺の母親に相談してたらしいよ当時。
俺は中学に入ってからやっと母親に聞いたんだけどね。
そんな矢先の隠し子発覚で、
稜佑を生んだ母親が……発狂した」
伊東くんは苦しそうに眉間にしわを寄せる。
「稜佑は本当のことを言わなかったけど、
その頃あいつしょっちゅう怪我してて。
そんな状態で稜佑の父親が離婚を持ちかけた。
それに同意したのは、既にまともじゃなかった母親の親族側。
母親に無理やりにでも書類を書かせて
稜佑とその父親の元から避難させた。
そのすぐ直後だよ。
男性に再婚するため空けなくちゃいけない期間はないからね。
その隠し子の母親だった今のあいつらの母親と結婚して、
山田さんもすでにわかってると思うけど、
その人は麗佳ちゃんを連れて桃井家にやってきた」