「えっ……!」

まだ人の来ていない静かな図書室に

彼の声が響いた。


「……まだ入っちゃダメだったかな」

急いで出ようとすると、

「あっ、いや、大丈夫。

山田さんここで見るの初めてで驚いただけだから。

俺今週委員会の当番で……」


と徐々に落ち着きを取り戻して、

私をどうぞと図書室の中へ促した。


「うん……」

私は特に本を読んでいたかったわけでもないし、

水野くんの居るカウンターに一番近い席に座る。


「まだ人いないね」


机にうつ伏せて、

頬を腕に乗せながら、

頭上にある彼に話しかける。


「昼済んだ人から徐々に来るんだ」


本を読むのをやめて、

私の方を見る彼と目が合う。


「だから、今は俺たち2人だ……」


吐息交じりの声に

思わず体を起こす。


「あ、はは……そっか!

こんなに静かな図書室初めてだよ――」


言い終わりと同時に

人が入ってきて咄嗟に口を押さえる。


流石に利用者が来てからおしゃべりは良くないよね。


「水野くん、人も来たし、

私行くね」


小声でそう伝えて図書室を後にする。


……水野くんに告白されてから、

なんだか変に構えちゃって自然体ではいられないなあ。