少し遅れて教室に戻ると、
「じゃあ、山田さん」
水野くんが入れ替わりで出て行く。
「香乃子、おかえりー」
紗依が優しく笑ってくれた表情を見て
力が抜ける。
「香乃子?……どうしたの?」
紗依までいなくなっちゃったら嫌だ。
「ううん、なんでもないの」
もう余計なこと言わないでおこう。
紗依にばかり頼ってばかりだって反省した。
もう少し自分で考えないと。
もっとちゃんとしっかりしないと。
「帰ろっか!」
学校を出て、
2人並んで歩く。
「暑いねー」
「うん、もう梅雨も終わって夏だもんね」
私は学校では相変わらず
長袖のカーディガンを着ていたけど、
下校中はたまらず鞄にしまう。
しまい終わって鞄をごそごそしていると
隣で並んで歩いていた紗依の足が止まった。
「……紗依?」
彼女の見ている方に
私も目を向けると、
一度だけ見た事のある顔が。
……稜佑の妹さん?