廊下にしゃがむ私は
その声のした方に
顔を上げる。
「水、野く……ん――」
流しっぱなしな涙が
また一滴頬を流れたのを
どこか冷静に実感していると
水野くんがびっくりした表情で私に駆け寄る。
「山田さんっ!何があった?」
「あ……えっと、稜佑と……ちょっと」
「桃井!?」
廊下にぺたんと尻をつけて座る私に
水野くんは視線を合わせてしゃがんでくれた。
「あー、なんか、過去のあの事を話したらね、
私とはもう関わりたくないって……」
しゃくり混じりに説明すると、
水野くんの表情が途端に歪む。
彼は
端整で綺麗な顔で
眉間にしわを寄せると、
廊下に膝をついて、
私の頬に手を添え手のひらで涙を拭った。