誰もいない廊下で

気持ちのいいくらい嗚咽をあげて

泣きじゃくる。


泣きたいわけじゃないのに。


だけど何て言えば稜佑を傷つけずに

自分の気持ちを伝えられるのか。


先ずはじめに

『好き』と言えばいいのか、

『ごめん』と言えばいいのか。


それがわからない。


引き止めてどうしていいかわからない。


好きなのにどうしようもない

この現実を受け止められずに

すごく胸が痛いの、苦しいの。


実際に心臓が痛いわけがないのに、

抉られているよう。


痛みにはより大きな痛みをと

左胸を叩いてみても

痛みは、涙は止まらない。


「あぁ……もう嫌だ……」


暗闇に溶けていくような、

涙と一緒に何かが剥がれそうになって


それを打ち破るように

知っている声が私を呼んだ。



「……山田さんっ!!?」