『好き』
言われた言葉がストンと落ちる。
私が稜佑に対して、
ずっともやもやしてたこと。
『好き』
この言葉で表す気持ちなのかもしれない。
初めは稜佑の距離感の近さに確かに本当に怖がってた。
だけど、いつの間にか、この人なら大丈夫って、
ドキドキした気持ちは
稜佑を想ってたからであって、
それを素直になれずにつんけんしてただけでっ――
「誰にも忘れられない過去があるよな。
……ごめんね、香乃子ちゃん。
もう、関わらないようにするから」
そう言い終ると、
再び教室を出て行く稜佑。
「違うよ!!」
私は必死に彼のシャツをつかむ。
「いいよ、無理しなくて」
苦笑いを向けられて思わず否定する。
「無理じゃないよっ!!」
涙が口に入ってしょっぱい。
だけど気持ちを伝えないとって必死で。
「手、震えてるよ」
シャツにかけた私の手を
稜佑は触れようとして、手を戻した。
「お願い、行かないでっっ」
もう行っちゃったら、
二度と傍にいられなくなるんだって思うからっ。
「香乃子ちゃんといたら俺は触れたくなるんだ。
近づきたくなる。
でもそれが許されないなら、辛いんだ。
香乃子ちゃんのためとかいって、俺のためなの、結局。
お願いだから、もうそっとしてくれ。
俺に関わらないでくれよ」