『特別なんだって“思ってた”』
過去形じゃん。
「でも香乃子ちゃんにとって
俺は過去の嫌な記憶を思い出してしまう恐怖な存在で
近寄られたくない気持ち悪い奴ってことだよな。
……ずっと香乃子ちゃんに言われてたのにな、
『別に構ってもらいたくない』
『嫌いに変わりない』って」
そうだ、私ずっと彼にそう言ってきたんだ。
その言葉を言ってしまったことは嘘ではないのに、
他人に復唱されると、
真っ先に『違う』って感じてしまう。
本心じゃないんだ、
私、本当はそんなこと思ってないんだ。
伊東くんに話した過去は
水野くんや紗依に聞いてもらったものよりもアバウトで、
きっとおおまかにしか稜佑に伝わってない。
やっぱり自分で話さなくちゃいけなかったんだ。
だって、嫌だよ、
稜佑のおかげで私は1人じゃなくなったのに。
温かい気持ちをたくさんもらったのに。
「今までは誰も上辺でしか俺を見ないのわかってて、
それでも割り切ってたのに
急に香乃子ちゃんが俺の中にどかどか入ってきて、
初めはさ、単なる興味で近づいて
でも惹かれてしまいそうになる度嫌われそうな言って牽制して。
それでも本心では好いてほしい、求めてほしい、
何より俺がこの子と居たいって思ってた。
香乃子ちゃんのこと、好き、だったんだ。
だけど、大切な子を自分が傷つけてるなら
もう傍にいることすら許されないんだ」