見たことない

暗い表情に

一瞬恐怖心がわく。


「あ、ごめん……引き止めて」


どうしても

彼女たちと行ってほしくなかった。


引き止めた私の言葉を優先してくれたことに

どこか優越心を抱いてる、

きたない私がいるの。


「……大丈夫なの?」


はあと大きくため息をついた稜佑から

聞こえた言葉は意外なもので、

何に対して聞かれているのか、全くわからない。


大丈夫なの、って、何のこと。


「あ、茜と美奈のこと!?」


さっきあった2人との会話、場面を思い出して

また涙が出そうなのを

誤魔化すために明るく答える。


「え、立川と久良伎……?何それ」


……あれ、違った。


「あ、違うよね……ごめん」

でも他に今大丈夫なのって聞かれるようなこと

思い当たらないよ。


「香乃子ちゃん、

男と教室で2人きりとか、大丈夫なの?って事!

気持ち悪いし、怖いんじゃないの?」