――「起立ー、礼」


帰りの号令がかかった。

私はすぐ茜と美奈に目を移す。


やっぱりお昼のときみたいに、

今日は帰りも別々に帰ってしまうみたいだ。


茜に部活があっても、最短昇降口までは

いつも4人で帰っているのに。


付き合ってもらわない、と伝えた紗依は

心配そうに私たちを見ながらも

掃除へ向かった。


2人は私や紗依に何も言わず、

教室を出た。


私はもう一度深く深呼吸して

その後を追う。


「茜っ!美奈っ!」


階段を降りる手前ギリギリで

名前を呼ぶと

2人はびっくりした顔でこっちを向いた。


「……ごめん、止めて。

ちゃんと、話したくて」


2人は無言のまま

踊り場までずれて

私をじっと見た。


……何か、言わなくちゃ。


でも、何を?


今朝伊東くんと一緒に居たこと?

それを話すなら先ずは

稜祐と気まずいこととか

その理由、

しかもそれを話すなら

美奈にも気まずく感じてたことを謝らなくちゃで。



それに、

私の口調が強くならないように

注意しないと……。