「山田さん、おはよう。
……どうかした?」
教室の入り口で後ろに進む私の行動を
伊東くんは不思議に思っているみたいで、
心配そうに首をかしげた。
「あ……いや、えっと……」
自分でも何を思って行動を起こしたのかわからずに
肩にかかる鞄の取っ手をぎゅっと握った。
何も言わない私と教室を交互に見ると
伊東くんは「ああ」と納得したように頷いて
「ちょっといい?」
と私を廊下へ出るよう促した。
私は黙って頷くと
彼の後を追って廊下の奥へ。
周りが静かになって
伊東くんは足を止めると、
多分意図的に私とは少し距離をとってくれた後
ゆっくり話し始めた。
「……山田さん俺さ、
稜佑と山田さんのお互いの誤解をといてほしい、
みたいなこと言ったと思う」
私はそれに黙って頷く。
「でもそれ、
山田さんに余計わけわからなくさせちゃった気がして。
俺なりに考えてみたんだけど、
山田さん、
山田さんさえよければ稜佑に過去何があったかを
話してみるのは……どう?」