「次体育だよー、着替え行こー!」


茜がジャージの入ったバッグを取って

ぶんぶん振り回す。


更衣室に入ると、

2クラス合同の体育だから、

隣のクラスの女子も着替えを始めていた。


私たちとすれ違いで出て行く女子は

腰にジャージの上着を巻いている。


「もう半そで半ズボンでいいよねー」

茜は混み合う更衣室で暑そうにシャツを脱いで

半そでに着替えると、

続いて半ズボン、くるぶし丈のソックスを履いて

準備を終えた。


「ちょっと待ってー」

日差しがかなり強くなってきたのもあり、

美奈は日焼け止めを入念に塗っていた。


私は着替えの最中、

隣に居たクラスの女子に肌が当たり、

生ぬるい感触に不快感を感じたせいか

はやくここから出たかった。


「あ……、私トイレ行きたいから先出とく」

思いついた嘘を吐いて

1人先にそこを出た。


念のため、

髪結わくためにもトイレ入っておくか。


洗面台につく鏡で髪をまとめて、

適当にトイレから出ると、

「あっ」

向こうからの聞きなれた声に顔を上げる。


ゆるく着崩したジャージ姿で

だるそうにグラウンドへ足を進めているであろう稜佑だ。


……なんか、会いたくない、話したくない。


ばっちりと目は合ってなかったし、

気づかないふりをして私もグラウンドへ向か――おうとして、

「香乃子ちゃーん」

名前を呼ばれて足を止める。