――「あっ、居た!香乃子!」

水野くんと2人、

どっちも喋らずにボーっとしていると、

焦ったように紗依が私の前まで駆けて来た。


「どうしたの?みんな心配してるよ」

そう言われると

申し訳ない気持ちとともに

『みんな』という言葉に美奈と稜佑の姿が浮かんだ。


「……うん、ごめん」

何があったのか、説明するべきなの?


少し迷って、

でも言わないことにした。

気分のいい話ではないから。


そんな私を不思議そうに見る紗依に

「山田さん、少し気分が悪くなったみたいで

外の空気を吸わせてたんだ」

水野くんが咄嗟に庇ってくれる。


「ああ、そうなんだね」

安心したように笑うと、

手に持っていたスマホを触りだして、


「『香乃子いたよっ!具合悪くて中庭で落ち着いてたんだって』って

みんなに知らせといた」

紗依は優しく私を見た。


嘘をついているのが心地悪い。


でも、今はこれしかないよね。


「一緒に帰れそう?」

そんな紗依の言葉に

うなだれたように頷いてみた。