「いや、俺も話させてしまって、
ごめん。
話すの辛かったと思う」
無理に当時の感想を言わないあたり、
水野くんらしいし、
私からすると助かる。
「ううん、もう過去のことってわかってるから。
普通に日常を過ごす分には大丈夫なんだ。
……でも、ごめん、
もう少しだけ、教室には戻りたくない」
上履きのまま、
掃除もやりっぱなし、
鞄も荷物も全部置いたままだけど、
ごめん、もう少しだけ。
「俺も居るから。
落ち着いたら一緒に戻ろう。
その頃には桃井も久良伎さんもいないと思う」
「うん」
水野くんの優しい穏やかな声が
胸に響いた。
でも2人の名前を聞くと
胸が苦しくなった。
そう、この痛みは
トラウマが蘇ったからだけじゃない。
あの2人、何してたの。
今日美奈が稜佑のこと、
恋愛対象として狙ってみるって言ってたな。
稜佑は来るもの拒まずで応えたって事?
もう訳がわからない。