「山田さん!!俺だから!水野だから!!」
耳をふさいでいても
聞こえる大声で水野くんは
私を呼んだ。
……水野、くん?
顔を上げると、
知っている顔。
「とにかく、落ち着こう。
ほら座ろう」
上履きのまま駆けてきたのは中庭。
木の下にあるベンチを指差し、
水野くんは私に手を差し伸べた。
だけど、
今はちょっと、
人の皮膚や体温に触れたくない。
私は首を横に振って
自分でおろおろと歩いた。
力気なく腰を下ろすと、
水野くんはそんな私を見下ろして、
「何か、飲み物でも買ってくるよ」
とここから見える
自販機へ行ってしまった。