「結局何が言いたいわけ?」
顔の近さに思わず斜め下を向くと、
丁度奴の口元が私の耳の前になり、
耳元で囁かれてしまう。
「香乃子ちゃんの可愛さは俺だけが知ってたのに。
もっと可愛くなられたら、困る」
急に顔が暑くなる。
どうしてそんな甘い声で言うの……。
「レンズ越しじゃないその瞳も、
眉までになった前髪も、
ふわふわなセミロングの髪型も
膝上になったスカートも、ヤバいから」
……なんで、私が全部ダテメ外す際に
変えた箇所、わかっちゃうんだろう。
「……私本当はこういう格好が、好き、だし」
私の毒舌は前からで、
だからこそ同性の友達は貴重な存在だったけど、
代わりに小学生の後半からは
元々変にはっきりしてる顔立ちのせいで
男子からからかわれたり、
気持ち悪い言葉をかけられたり。
後はあの時、怖くて思い出したくもないあの件。
そんな色々な昔の事情で怖くて
男の人を避けるためにしていたガードがあの格好。
でも、稜佑に会って、
もうそれもそろそろいいかな、なんて。
何で、そんなこと思っちゃったんだろう。