「え、俺?
俺なんもしてねーじゃん」
確かに。
言われて気づいた。
あの時私の苦手を見つけてくれたのはそうだけど、
その前までは基本うるさくしてただけだし。
「うるさかったしね」
私がそう言うと、形勢逆転というか、なんというか。
「悪かったってー!
だからお詫びに香乃子ちゃんの弱点教えてあげたじゃん!」
あれは詫びのつもりだったのか。
「なるほどね。
どっちかっていうと確かに私迷惑かけられてたわ」
なんて納得してると。
「えー、等価交換じゃないと!?
……んー、じゃあさ、香乃子ちゃん俺と賭けしない?」
急に何か言ってきたぞ、コイツ。
不思議に思って、そのまま聞いてると、
「俺が首席なの信じてなかったぽいし?
俺が学年1位とったらさ……」
といって、私のかけていた眼鏡に手を触れた。
「え……」
「香乃子ちゃん、そのダテメ外してよ」
すっかり暗くなった外からの月明かりが稜佑を照らしている。
稜祐って、いつも明るくて『太陽』って感じだけど、
今は妙に妖艶という感じだった。