「なあ、もう暗くなってきたし、帰んね?」

一番何もしてない奴が言うか、と思ったけど、

水野くんも

「ああ」

と賛成だったみたいで、それぞれ帰る支度を始めた。


水野くんは私の今日の出来を見て、

土日用にやるべき問題を絞ってくれている。


「……こんな感じで、山田さん解いてきて」

そう言って私にノートと教科書を渡――そうとした時、

稜佑がそれをひったくる。


「ちょっと!」

私が睨むと、

「香乃子ちゃんは、後これも苦手だと思う」

と水野くんの付けた印に、線を足していた。


「ここ、出るぜ」

なんていたずらっ子のような顔で私に教科書を渡す。

……こいつ、茶化しに来ただけかと思ったら、

ちゃんと見てくれてたんだ。


「あ、ありがとう」

珍しく素直になった私に

稜佑はびっくりしたらしく、目を見開いた。


「うわ、珍し!」

「珍しくて悪かったわね!!」


なんて会話をしていると、

「行こうか」

と水野くんが鞄を手に取り、

私たちも教室の戸締りをして後に続いた。

廊下に出ると電気はついていなくて

月明かりがさしている。