「……何?」
そういえば、初めて喋った時も、こんな感じだったよなー。
なんて当時をすうっと思い出す。
あの時は水野くんとこうやって一緒に放課後勉強するなんて思ってなかったな。
「……山田さん?」
水野くんは無言の私を不思議に思ったのか、
首を傾けて私の名前を呼んだ。
「……ああっ、ごめん!
なんか、こうやって水野くんに勉強教えてもらえる日が来るなんて、
前まで全然思ってなかったなーって」
私が彼とのやりとりをなんとなく思い出したのと
彼が言葉を発したのは同時で、
「ああ、俺が牽制したから。
友達とかいらない、なんて言って」
冷静に淡々とそう言った。
……そうだよね、水野くんはあの時、
『友達は好きで作ってない』とか、なんとか。
当時は他人と話すのが苦手なのかな?とか、
何よりも読書が優先なのかな、なんて勝手な憶測をしていたけど、
あの研修から何度か話してきた今となっては
口数は少なくとも、私と普通に会話してくれるし、
こうやって放課後勉強教えてくれる人が何より読書優先と思ってるわけはないはず。
今まで勝手に思ってた彼の像がくずれて、
ふと思い浮かんだ疑問を
私はつい気になって聞いてしまった。
「なんで友達作らないの?」