――「えっ、水野くんと放課後勉強会?」
茜の部活がテスト休みのため
珍しく4人揃って帰ろうと誘われたけど、
今日は断らなくちゃいけなかった。
そう、これから水野くんに勉強を教えてもらうんだから。
「水野くんと香乃子が一緒にお勉強するの?」
心配そうに紗依が私に尋ねるのは、
きっと彼からの提案だと知らないからだと思う。
「実は、――」
昼休みのいきさつを話すと、
みんなはびっくりして「水野くんからの提案なんだ……」なんて言ってた。
「そっか、今日私たちも香乃子誘って勉強会しよう!って言ってたのに、先こされちゃったね」
美奈達も私のことを心配してくれたみたい。
「だけど、せっかくあの水野くんが教えてくれるならそっちの方がいいね!」
茜は『あの水野くん』とやけに強調した。
でもこうやって私の心配をしてもらえるって嬉しいなあ……。
「うん、気にかけてくれてありがとう!
また次は一緒に勉強したい。
今回は水野くんに面倒みてもらうわ」
自分で言ってて情けないけど……。
「水野くん、小テストとかいつも満点だからきっととてもわかりやすいんじゃないかな?」
ああ、紗依のおかげで疑問が拭えた。
茜が言ってた『あの』っていうのはそういうことね。
……て、ことはちゃんと結果出さないと!
「うん、教えてもらうからにはちゃんと良い点取らなきゃね!」
なんて意気込んでると、
「……山田さん」
掃除が終わったのだろう水野くんの声が後ろから聞こえた。
「わぁ!」
「……『わぁ』って。
やるよ?」
私の驚きぶりに呆れながらも、
彼の机とその前のをくっつけて、向き合う形に並べ始めた。
「あ、じゃあ、始めるみたいだから行くね!
また明日ねっ!」
みんなに手を振って私も教科書を持ち寄った。
「で、では、よろしくお願いしますっ」
机に座って、彼と向き合うと、
早速始めてくれようとしたので
慌ててお辞儀をした。