「………………」

恐ろしくて目が見れず、さらに何も言えない私。


「あれ、山田さん?靴履き替えないの?」


そんな私を気にもとめず、桃井稜佑は上履きに履きかえ、

私を抜いて教室へ向かう足を進めた。



「……え?」


てっきり責められるか怒られるか脅されるかなどと思ってた私は

拍子抜けして、思考を停止してしまった。


何事もなかったかのように教室の方向へ消えた彼の背中。

はっとしてから、私もとりあえず靴を履き替え教室に向かう。



もしかして、軟派過ぎて気にしてないんじゃないか。

それか低脳なりに自分に非があったことを認めて、

昨日の事はなかったことにするんじゃないか。


どちらにしても関わらないで済むのなら、なんだっていいよ!!


昨日からずっと悶々としていた不安が、

今になってようやく晴れてきている。


あー、何事もなくて良かった。

アイツもほんの少しはマシなところあるんだなぁ。


急に足取りも軽くなり、

昇降口から廊下を歩き、階段を上るために左へ曲がった……


先に、また、居た。



「あ、山田さんさ、それで昨日のことなんだけど!――」


嘘っ、やっぱ気にしてた!!