「香乃子、水野くんと何話してたの?」
戻るとその近くで話してた3人がこっちにきてくれて、
紗依が少し心配そうに私に話しかけた。
「なんか水野くんに本借りちゃった」
私自身よくわかってなく、
ぼけーとした感じで答えると、
3人も「え、何でだろ?」という顔をした。
すぐに茜が
「水野くんも本好きな友達が欲しかったんじゃん?」
と人差し指と立てて言うと、
私はあの時の水野くんの言葉を思い出す。
『友達はいらない。
好きで作ってないから』
友達はいらないっていってた、
でも稜佑は水野くんも寂しいじゃないかって気にしてた。
もしかして水野くんは私があの時
この本を読みたいといったのを覚えていて、
ただ単に自分が読み終わって貸してくれたってことなの?
それとも寂しくて、本の事で話せる人が欲しかったの?
……理由はなんにせよ、嬉しいな。
なんか彼と話せたこと、彼が私との会話を覚えててくれたかもしれないこと。
どこかを自分のように重ねてた人だから、
彼が誰かと交流するところがみれると
失礼だけど安心しちゃうんだよね。
この本、すぐ読もう。
読んで、水野くんにお礼をいって、
それから感想を言い合えたりなんかしたら素敵だな。
私はそんなことを考えていた。
「わー、私やっと今週からテスト前の部活休みだよー!」
「もう来週後半からはテストだもんね」
「高校初めてのテストだし、緊張するね」
本を借りられたことが嬉しくて
その会話が耳に入ってなかった私は
その日から2日ですぐ本を読み終えて、
そして気づく。
あれ、私、テスト勉強は……?